ドラマに音楽にファッションに……とにかく元気な韓国カルチャー。一方で、厳しい競争の中でやや疲れを感じている人も多いよう。そのせいか、リアルな日常でつい漏らしてしまう本音のようなエッセイが続々。「あるある」名言に共感、そう、悩んでいるのはわたしだけじゃない!
INDEX
『今日も言い訳しながら生きてます』
ハ・ワン 著・イラスト
岡崎暢子 訳
『あやうく一生懸命生きるところだった』がベストセラーとなったハ・ワンさんによる2作目のエッセイ。著者は、3浪の末、美大に入学。卒業後、3年間の引きこもり生活を送り、就職。イラストレーターとして独立するも、本業よりエッセイが大ヒット。人間関係に不器用で、何ごとも思い通りにはいかない人生を実感する著者の言葉は、SNS時代の今こそ、ココロのポケットから時々、取り出したいお守りのようなもの。
『あやうく一生懸命生きるところだった』がヒットして、セミナーなど予期せぬ依頼が舞い込むようになってきたハ・ワンさん。突然、脚光を浴びるようになり感じたことは、注目されたくてたまらない注目中毒者になってしまったのではないかということ。そして、世間に拍手をもらった途端、きっと、自分はつけあがる。世間に振り回される姿は美しくないのだ。
40歳を前に違う生き方をしたくなったハ・ワンさんは、「そんなにうまくいっている人生でもないのに、何か心配することがあるのか?」と自問して、半ば衝動的に退職。結果として、良い方向に流れているだけ……。人生の本質は“不確かさ”、そして、ひょっとしたら、人生は考えるほど重たいものではないかもしれないと語る。
親子関係、恋人同士……近しい関係であればあるほど、つい、無神経な言葉遣いや態度を取ってしまう。愛する人たちと距離を置くというのは、それぞれが別々の存在であることをしっかり認識しておくということ。互いに必要以上に傷つけ合わないために、そして、愛する人の問題を自分ごとのように悩み過ぎて一緒にゆううつの沼にはまってしまわないために。
韓国では、就職のためのスペック9種セットというのがあるそう。有名大学卒、成績、TOEIC900点台後半、語学留学、有資格、公募展入賞歴、インターン経歴、ボランティア活動、整形手術。し烈さを増す競争社会で、戦わずに生きていけるのだろうか、と自問しつつも、競争を嫌い、できるだけ戦わないで生きようがモットーだと語る著者。「つまり、僕の姿勢は、不可能に挑戦する勇気だ。だから、決して卑怯者ではないよ」
人脈こそが、財産とはよく耳にする言葉。もちろん、ハ・ワンさんも人脈を広げようと努力をした。が、楽しいどころかストレスばかりが増えていく。「可能性とチャンスで広がっていく大きな世界より、ストレスの少ない小さな井戸の中のほうがいい」と。器が小さいと自認して、ならば、その小さな器にはなみなみと注がなければいいだけと思い至った。
『あたしだけ何も起こらない “その年”になったあなたに捧げる日常共感書』
ハン・ソルヒ 著
オ・ジヘ イラスト
藤田麗子 訳
著者ハル・ソルヒさんは1976年生まれ。2007年~2019年にわたってシーズン17まで放送されたtvNの最長寿ドラマ『ブッとび!ヨンエさん』の脚本を手がけ、30代独身女性の日常をリアルに描いて好評を博した。この本は、自身の日常や独身アラフォー目線で振り返る若き自分との対峙を描いて、クスリと笑いながらも身につまされるエピソードがいっぱいのエッセイ。もし、「年齢」の壁 が目の前に立ちはだかったら、彼女のように、年齢が培ってくれた知性とユーモアとタフネスでかわしたい。6月11日発売。
「その年で……」に続く言葉に傷ついたこと、誰もが一度や二度、思い当たるのでは? 結婚もしていない子どももいない積み立て預金もない、そんなハン・ソルヒさんにはしょっちゅうあることのよう。でも、人生100年としたら、今は中間決算。「大人になる道は険しいが、それでも、まっすぐ歩いて行けば、大人へとつながる道のどこかにたどり着くのでは」と前向き。
レズビアンである友人が10年も付き合っていた恋人の名前をハン・ソルヒさんが言い間違えてしまい、投げつけられた言葉。同世代や後輩たちが結婚していくなか、一人だけ仲間外れになったような気がして、周囲が見えなくなって愚痴る著者。こんな厳しくも率直なことを言ってくれる友の存在は貴重。
ふと見つけた大企業の名刺。電話をかけ「どなた?」と聞いたら、1年以上付き合っていたボーイフレンドだったというほど忘れっぽくなったり、ダイエットがうまくいかず妊婦に間違えられたり、お見合いの席で飲み過ぎて倒れてしまったり、両親が結婚のことを口にしなくなったり……。大小さまざまなことに傷ついて、用心深さと恐ればかりが大きくなってしまったのではと気づいたハン・ソルヒさん。しかし、ふたたび、思う。「私が人生の中でたびたび思い出す記憶とは、大小の事件や事故によってできた多くの傷の集合体ではないだろうか」。20代・30代でいくつか恋をして死ぬほどつらいと思ったけど……、でも、安定を求めるより、やっぱりまた恋をしようと力強く決意。見習いたい。
『死にたいけどトッポッキは食べたい』
ペク・セヒ 著
山口ミル 訳
著者ペク・セヒさんは1990年ソウル生まれ。気分変調症(軽度のうつ病)と不安障害を抱えて精神科を転々としながら、出版社に勤務する。この本は、重要な会話を録音する習慣のあるペク・セヒさんが、家族や友人、恋人との間で、そして職場や通勤途中で感じるさまざまな精神的苦痛について精神科医と語り合った記録。
先生は「人は他人との関係のなかで生きていかなければなりませんが、自分の空間だって必要ですから」と続ける。これは、いわゆる、人と人との心理的関係を表現する言葉、“ヤマアラシのジレンマ”というもの。特別な感情ではないと受け入れたうえで、コロナ禍にある今、他人といかに程よい距離感やコミュニケーションを保つかという工夫を誰もが迫られている。
つねに自己肯定感の低さに苛まれるペク・セヒさん。「今のあなたはまるで自分の人生と過去が失敗だったみたいに思っている」と先生に指摘されながらも、実際は、編入試験を受け、大学を卒業し、出版社に入ってやりたい仕事をしている。「どうして高いところばかりを見て、自分を苦しめるのだろう」と自問する一方で、「頑張らなくても大丈夫だ。私は今日、うまくやれないかもしれない。それも経験だ。大丈夫」とゆっくりと成長していく。
私は大好きな人たちのダメなところも素敵なところも含めて好きだけど、自分のマイナス点を知られたら嫌われるのではと不安になってしまうペクさん。一部分を見て人との関係を続けるとか終わらせるという問題ではないとも理解している。これもまた、自己肯定感につながる。自己肯定感のあり方によって、他人の真心の受け止め方が変わってくるのだという先生のアドバイスには深くうなづけるはず。
『自分にかけたい言葉~ありがとう~』
チョン・スンファン 著
小笠原藤子 訳
SNSの書評サイト「本を読んでくれる男(THE BOOK MAN)」を運営をしながら作家活動をするチョン・スンファンさんが、まるで妹や弟の肩を抱くように綴った詩とエッセイ。SEVENTEENのユン・ジョンハンさんやFTISLANDのイ・ホンギさんなど、K-POPアイドルも大絶賛したそう。本書に収められた言葉の数々は、わかりやすくて優しくて、澄み切った水のようにすーっと沁みていく。
広く浅く付き合うか、狭いけれど深く付き合うか。いや、広く深く付き合いたい。昔、友達と交わしたこんな会話を思い出したチョン・スンファンさんは、数年経って、また同じ友達にこの話を持ち出す。「いずれにせよ、人間関係に正解なんてない。重要なのは深さじゃなくて、接する態度が大切だったんだな」と少し大人になった友達は語り、同意した著者は「ひとつだけ間違いなくわかったことがある」と続ける。人間関係で大きな違いを生むのは誠意なのだと。
日々、何かしらの問題と無縁でいられる人なんていない。順調そうに仕事に励む人だって、もしかしたら、失恋の危機にあるかもしれない。ひとつ解決してもまた新しい悩みが生まれてくる。そう、誰もが押し寄せる問題の中で生きていると言えそう。もし、恋人の何気ない一言にいろんな妄想を巡らせているとしたら、まだ起きてもいないことに不安がるのはやめよう。
好きだった人の思い出に囚われていると、同時に、別れた悲しみも持ち続けることになる。もしかしたら、そのせいで、目の前で差し出されている手が見えないこともありそう。「春の新緑をそのままにしたいと思っても夏が来ないわけではなく<中略>ただ新しい季節を迎えて 過ぎ行く季節は見送ればよい」とチョン・スンファンさんがつづるように、つらい別れや心配ごとを仕舞い込むのはやめて、流れにまかせてみてはどう?
『女ふたり、暮らしています。』
キム・ハナ、ファン・ソヌ 著
清水知佐子 訳
著書『力を抜く技術(未邦訳)』が韓国でヒットしラジオ番組への出演など多岐にわたって活動をしているキム・ハナさん(1976年生まれ)と、長年、ファッション誌エディターとして忙しく働いてきたファン・ソヌさん(1977年生まれ)。40歳を前にした二人は銀行ローンを組みマンションを購入、猫4匹と一緒に暮らしはじめた。シングルでも結婚でもないこのスタイルを分子家族(W2C4)と名付け、本書に続くように、韓国では新しい家族の形を描いたエッセイが続々、登場。
一人暮らしにも慣れた頃、キム・ハナさんはふと、気楽さを超える“つらさ”のようなものを抱えていることに気づく。でも、結婚制度の中に飛び込むのは得策ではない。そして、気の合う女友達、ファン・ソヌさんに同居を提案。「女ふたりに、猫が四匹。今の分子構造はとても安定している」と続ける。
「ひとり力マックス」と自認するファン・ソヌさんは、ひとりご飯はもちろんひとり旅、ひとりサーフィンだって……、ひとりだからできないというのは嫌だから何でもやってきた。今もひとりご飯もひとり旅も好きだがそれは記憶に残るだけで、誰かと一緒であれば思い出になる。たとえ、喧嘩をしながら……であっても!
いくら気が合うといっても、これまでの生活習慣やルールが違うから衝突は避けられないもの。ついには、けんかの仕方の違いでまたけんか。そして、ファン・ソヌさんはけんかの目的は何だろうと考える。「自分の世界に誰かを招き入れると決めた以上、互いの感情をうかがい、心の平和を願いながら努力するしかない」これは、誰にとっても、大切な人との関係には当てはまりそう。
二人はパジャマのまま、ご飯を食べ、本を読み、原稿を書く。鼻炎がひどくなったキム・ハナさんは、丸めたティッシュを鼻に詰めたまま机に向かっている。そんなハナさんを見て、「つまらない存在ではなく、尊敬すべきで、まさにそう思える距離にいる」とファン・ソヌさん。また、ハナさんがパジャマのまま過ごしたかと思える一日でも、彼女の考えはとても遠くまで及んでいるとソヌさんはつづる。どんな姿でも安心してさらけ出せるのは、強い信頼の証と言えるのかも。
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May 21, 2021 at 11:08AM
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