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“初”来日のフェルメール 謎いっぱいの2作品を大解剖 - 日経クロストレンド

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※日経トレンディ2022年1月臨時増刊号より。詳しくは本誌参照

日本に愛好者が多い17世紀オランダの画家フェルメール。現存する作品は30数点しかないが、そのうち、2点が来日中だ。350年以上の時を経て画家が描いた当時の姿に戻った初期の傑作『窓辺で手紙を読む女』は、修復完了後、ドイツで公開され初めての海外展示で、“初”来日だ。また、米国・メトロポリタン美術館からは晩年の異色作『信仰の寓意』が初上陸。待望の2点と出会うチャンスだ。

【F】修復後:ヨハネス・フェルメール『窓辺で手紙を読む女』

【F】修復後:ヨハネス・フェルメール『窓辺で手紙を読む女』

1657~59年頃/油彩・キャンバス/ドレスデン国立古典絵画館蔵/(c)Gemaldegalerie Alte Meister, Staatliche Kunstsammlungen Dresden, Photo by Wolfgang Kreische

“ホンモノの絵”を日本初公開 なぜキューピッドは封印されたのか

 2017年、フェルメールの初期の代表作『窓辺で手紙を読む女』に大事件が起きた。本作は、1979年のX線調査により、背景の壁面に描かれていたキューピッドの画中画が、塗り潰されていることが分かっていた。しかし、他のフェルメール作品にも同様の例があり、塗り潰しは画家自身が行ったと考えられてきた。ところが4年前、修復に伴う調査により、キューピッドの絵と上塗りした絵の具の間に長年の時間経過を示す汚れの層があるなど、画中画の塗り潰しが他人の手で行われていたことが判明したのだ。

 この絵は、1742年にパリのコレクターから、他の30点の作品と共にザクセン選帝侯のコレクションに加わったことが判っている。この時の手紙が残っており、『窓辺で手紙を読む女』はなんとレンブラントの作品として記録されている。しかも、同作品は他作品とは異なり、購入ではなく「贈り物」として加えられていた。「レンブラントの作品が無料だったのには、何か理由があるはず。実はこの購入に関わった人物が後にドレスデンに新設されたギャラリーの責任者に推薦されています。『贈り物』はこの見返りのためであり、その際、画中画がない方がレンブラントらしいと思われて消された可能性もあると、作品の所蔵館は考えています」と東京都美術館学芸員の髙城靖之氏は話す。

 画中画のキューピッドは、女性が読んでいる手紙は恋文であることを暗示しているが、修復によって、人間の嘘を象徴する仮面を踏みつけていることも明らかになった。これは女性の愛は真実の愛であることを示唆している。

 この作品にはさらなる謎がある。今回の修復で後年の加筆部分を除去したところ、周囲に木枠が描かれており、窓から女性のいる室内をのぞき込む、だまし絵のような構図になっていることが分かったのだ。右下隅には木枠に置かれたワイングラスの脚が見えるも、元は描かれていた上部をカーテンで隠したのは画家自身だ(展覧会では枠部分は額下で見えない)。「だまし絵は当時はやっていた手法ですが、フェルメールの他の作品には見られません。室内描写とグラスの脚の完成度に大きな違いがあり、もしかすると制作の途中でやめたのかもしれません」と髙城氏。一体フェルメールはどんな絵を意図していたのか。謎の解明は、始まったばかりだ。

 

【F】修復前:ヨハネス・フェルメール『窓辺で手紙を読む女』

【F】修復前:ヨハネス・フェルメール『窓辺で手紙を読む女』

1657~59年頃/油彩・キャンバス/ドレスデン国立古典絵画館蔵(Photo by Herbert Boswank 2015)/(c)Gemaldegalerie Alte Meister, Staatliche Kunstsammlungen Dresden

こうして画中画は表に出た!

 今回の修復は、19世紀以降作品保護のため表面に繰り返し施されてきたワニスを取り除くことから始まった。その過程で、画中画が塗り潰された部分の絵の具が、他の部分とは溶剤の反応の仕方が異なることが分かったのだ。さらなる調査を進めるうちに、先に本文で触れたような事実が判明。キューピッドの画中画が日の目を見ることになった。展覧会では、修復によってよみがえった鮮やかな色彩にも注目したい。

修復作業の様子

修復作業の様子

上下共に(c)SKD, photo: Kreische/Boswank

画中画が現れるまでの経緯

1657~59年頃:フェルメールが『窓辺で手紙を読む女』を制作

1742年:フランスのコレクターの元にあった作品が、この年、ザクセン選帝侯のコレクションに加わる。18世紀中には既に画中画は消されていた

1979年:X線調査でキューピッドが描かれた画中画が塗り潰されていることが発見されるが、画家自身が塗り潰したと解釈される

2017年:調査から画家以外の人物の手で消されたことが判明。翌年から画中画の上塗り層を取り除く修復を開始

2021年:9月、画中画が現れた修復後の『窓辺で手紙を読む女』が初披露される。

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May 13, 2022 at 03:00AM
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