年末年始に帰省や旅行をしたとき、地方での就職を考えた学生もいるだろう。自分が思い描く働き方や生き方が地方で実現できるなら、選択肢に入れるのもアリだ。ＵＩＪターン就職をした若手社会人に、地方で働く魅力や就活のコツを聞いた。（古郡天）
佐藤直紀さん（23）
〈私の選択〉
東京のテレビ局などを３年生の時から受け始めました。放送の仕事には憧れていたのですが、どうしても東京で一生働くイメージが湧いてきませんでした。地方就職サイトに登録したところ、出身地にもテレビ局やコミュニティーＦＭ局など、通信・放送系の企業が多数あることを知りました。「地元に貢献する仕事」に魅力を感じ、Ｕターン就職を決めました。
〈ここが魅力〉
慣れ親しんだ環境で働きながら地元に貢献できるところです。地元の情報や知識があるので、取引先との会話もスムーズ。地元には長年の友人もたくさんおり、集まって飲んでストレスを解消したり、悩みを共有したりしています。いつかは番組の企画・制作に挑戦し、地域の方に参加してもらえるような番組を作りたいです。
杉崎芽心さん（２４）
〈私の選択〉
大学で山岳部に入って山が好きになり、登山に行きやすい長野で就職しました。Ｉターンを考え始めたのは２年生のとき。面接やエントリーシート（ＥＳ）対策のため、地元紙を購読したり、長野に長期滞在したりしました。県の就活相談所「ジョブカフェ信州」も活用し、面接練習やＥＳ添削をお願いしました。公務員を目指したのは、親しい知人が公務員として働いていたからです。
〈ここが魅力〉
四季の移ろいを感じながら自転車で通勤しており、満員電車のストレスもありません。休日には登山をしたり、雄大な日本アルプスを眺めたりと、山を満喫しています。スーパーで地元の野菜を選ぶのも楽しく、自然豊かな長野の魅力を感じながら暮らしています。車社会なので、高齢になったときは不便があるかもしれませんね。
長幹太さん（２５）
〈私の選択〉
大ファンの中日ドラゴンズの地元で働きたかったのが理由です。首都圏の大学では、愛知県の企業情報はなかなか手に入らなかったので、東京都内にある「あいちＵＩＪターン支援センター」を活用。愛知県内への就活ツアーに参加したり、企業情報を調べたりしました。県外転勤することがないよう、主に県内だけで展開している企業を選びました。
〈ここが魅力〉
取引先との雑談で「この地域には昔、△△があった」「あの地域はまだ□□があるのか」といった会話についていけないなど小さな苦労はありますが、愛知で働くことが夢だったので、仕事を楽しんでいます。プライベートの時間も充実し、よく球場で試合観戦しています。取引先の紹介で選手に会ったこともあります。球団の地元で就職して良かったと思いました。
就職情報会社「マイナビ」が2009年以降、翌年卒業予定の大学生らを対象に実施している調査によると、「地元志向」が最多だったのは、リーマン・ショック後の10年卒で77.2％。その後、有効求人倍率の上昇とともに低下し、21年卒は54.9％になった。しかし、コロナ禍で有効求人倍率が下落すると地元志向は増加に転じ、22年卒は57.8％、23年卒は62.6％だった。
マイナビが昨年３～４月に大学３年生ら（調査時点）を対象に行った調査で、地元就職を希望する理由を尋ねたところ、〈１〉両親や祖父母の近くで生活したい（51.6％）〈２〉家から通えて経済的に楽（45.9％）〈３〉地元での生活に慣れている（41.6％）――が上位だった。自由記述では「実家で生活して貯金したい」「プライベートと仕事を両立したい」といった声が寄せられた。マイナビキャリアリサーチラボの沖本麻佑研究員=写真=は「家賃を節約できるなど、経済面のメリットも踏まえ、現実的な選択肢として地元就職を志向する学生が多いのではないか」と分析した。
日本学生支援機構によると、ＵＩＪターンをすることで大学時代に借りた奨学金を減免する制度は、2022年11月現在、福島県や栃木県など26都府県にある。同機構のホームページで確認できる。
厚生労働省は、地方就職の魅力をＰＲする「ＬＯ活プロジェクト」に取り組んでいる。事務局の佐柄賢さん=写真=によると、現在は学生約１万3000人、既卒者約２万人が登録しており、毎年、登録者のうち1200人ほどが地方で就職しているという。佐柄さんは「ホームページに先輩たちの体験談も掲載しているのでチェックしてほしい」と話す。大都市にＵＩＪターンの相談窓口を設けている自治体もある。
March 09, 2023 at 02:23PM
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